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大麻及びサイケデリックの私的使用合法化研究会 - 年次レポート(所長報告)

カテゴリ: 法規制・行政

公開日: 2025/12/29
更新日: 2026/01/06 01:17

大麻及びサイケデリックの私的使用合法化研究会 - 年次レポート(所長報告)

はじめに

本研究会は、科学的根拠、公衆衛生、人権、社会的影響の観点から、大麻およびサイケデリックの私的使用に関する法制度の在り方を研究している。本年度は、海外における制度進展に加え、日本国内のストリートレベルで顕在化しているリスク構造に焦点を当てた調査を行った。本レポートは、その成果と今後の国内の薬物政策的方向性を示すものである。


第1章 国際動向の整理

近年、複数の国と地域において、大麻およびサイケデリックの私的使用をめぐる法制度が大きく変化している。特に、公衆衛生と刑事政策を切り分けるアプローチが主流となりつつある。

大麻

  • 合法化後、若年層使用率の急増は見られず、違法市場の縮小と刑事司法コストの削減が確認されている。税収は依存症対策や教育へ再配分されている。

  • 私的使用と非営利栽培を認める段階的制度を導入し、管理可能な範囲での規制緩和を進めている。

サイケデリック

  • シロシビンの管理下使用を制度化し、医療と非犯罪化を明確に分離するモデルを採用している。

第2章 科学的研究の進展

大麻に関しては、慢性疼痛、てんかん、がん関連症状などへの補助療法としての有効性が整理されつつある。
サイケデリック分野では、うつ病、PTSD、依存症に対する治療補助効果が臨床研究で示され、心理的支援と環境設計の重要性が再確認された。


第3章 社会的影響とリスク評価

合法化・非犯罪化は万能ではなく、以下の点が課題として浮上している。
  • 過度使用への予防策
  • 未成年者保護の実効性
  • 商業化による消費拡大リスク

一方で、逮捕件数の減少、社会的スティグマの緩和、医療アクセスの改善といった正の効果も確認された。重要なのは、使用の可否ではなく、管理と教育の質である。

調査

国内ストリートレベルの実態

近年、「トー横界隈」に代表される若年層の滞留エリアにおいて、非公式な物質使用の実態調査と聞き取りを行った。

調査から明らかになった点は以下の通りである。

  • CBDなどカンナビノイド製品については、当該層においてほとんど認知されていない
  • 市販薬の過剰摂取や、ケタミンなど本来医療用途である物質の流用が確認されている

この状況は、禁止が使用そのものを抑止するのではなく、支援や医療につながりにくい未成年者が、精神的苦痛や身体的不調への対処として自己治療的に物質を使用せざるを得ない環境を生み、その結果として、管理や情報が不足した、より危険性の高い選択肢へと流入している可能性を示唆している。


第4章 日本特有の構造的問題

国内においてリスク管理や政策転換が進みにくい背景には、制度設計以前の構造的課題が存在する。

公衆衛生分野における予算配分の不足

依存症対策、ハームリダクション、現場での継続的支援は、政策上の優先順位が相対的に低く、警察・刑事司法分野と比較して投入される人的・財政的資源が限定的である。このことが、予防や早期介入よりも事後的対応に依存する構造を固定化している。

専門家層との認識の乖離

背景として、1998年以降に繰り返し実施されてきた薬物乱用防止五か年戦略、とりわけ「大麻ダメ」キャンペーンに代表される啓発政策の影響が指摘できる。これらの施策は、国民一般への注意喚起として一定の役割を果たした一方で、専門職教育や行政実務の場においても、物質を一律に危険・逸脱とみなす認知枠組みを長期的に形成してきた可能性がある。

その結果、法曹・行政・医療などの専門家層においても、意図せずして無意識的な偏見が内面化され、使用実態の多様性や、貧困、孤立、トラウマ、自己治療といった社会的要因が十分に検討されにくい状況が生じている。これは個々の専門家の倫理や姿勢の問題というよりも、長期的な政策メッセージと教育環境によって形成された構造的な影響と捉えるべきである。

加えて、日本の行政・政策形成に関与する層には、二代、三代にわたって高等教育を受け、法曹、官僚、研究職に加え、医師などの医療専門職、さらに国会議員や政策決定に関与する政治家として、同一の社会的階層内を循環する知的エリートが一定数存在する。このような人材の再生産構造は、専門性や制度理解の蓄積という利点を持つ一方で、価値観や問題設定、リスク認知の枠組みが世代を超えて継承・固定化されやすい環境を生み出している。

その結果、行政および政策決定の現場では、治安、秩序、制度の安定性を重視する視点が、専門判断層においても共有されやすく、現場で生じている健康被害や支援ニーズ、未成年者による自己治療的使用といった課題が、政策議題として十分に共有されにくい傾向がある。このような認識の断絶は、物質使用に伴う健康上・社会上の影響を実際に受けている当事者、すなわち依存症リスクを抱える若年層や未成年者、自己治療的に物質を使用している人々、不安定な生活環境に置かれている層の実態を政策課題として可視化しにくくし、科学的知見や実証データが制度設計に反映されるまでに時間を要する一因となっている。


第5章 政策的対応の方向性と制度基盤の整理

本研究会は、以下の方向性を中長期的な展望として掲げる。

  • 医療大麻の合法化
    科学的根拠に基づき、刑事規制とは切り離した医療利用を制度化する。
    現行制度においては、令和5年12月6日に成立した「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」(令和5年法律第84号)により、大麻草および大麻由来成分であるTHCから製造された医薬品については免許制度の下での施用等が可能となっている一方で、大麻草については引き続き禁止されている状況にある。
    また、同法の成立から2年以上が経過した現在においても、当該制度を利用した医薬品の承認や実際の施用事例は確認されておらず、承認審査体制の未整備や製造・供給体制の欠如などにより、制度が実質的に機能していないことが課題となっている。

  • 薬物乱用防止五か年戦略からの大麻およびサイケデリックの削除
    1998年以降繰り返し策定されてきた薬物乱用防止五か年戦略は、治安・道徳を中心とした枠組みのもとで、大麻やサイケデリックを一律に「乱用防止」の対象として位置づけてきた。
    しかし、医療利用、自己治療的使用、ハームリダクション、公衆衛生介入といった国際的知見の蓄積を踏まえると、これらの物質を同戦略に包含し続けることは、科学的検討や政策的柔軟性を著しく阻害している。
    本研究会は、大麻およびサイケデリックを「乱用防止」の一括的対象から切り離し、医療・公衆衛生・研究の文脈で再整理することを提言する。

  • 物質依存症者の人権活動の強化
    依存を犯罪ではなく公衆衛生と人権の問題として位置づける。

  • 専門家・市民への継続的説明
    海外データと国内実態を接続し、偏見ではなく管理と教育の視点を共有する。

  • 大麻輸出基盤の構築
    自ら大麻栽培免許を保持し、業界に長年貢献していた丸井 英弘弁護士からの生前の相談を契機として、国際基準対応、農家のリスク管理、トレーサビリティ確保を含む制度設計に注力する。


おわりに

日本における最大のリスクは、物質そのものではなく、現実を直視しない制度と沈黙の構造である。海外事例と国内の実態を接続し、排除ではなく管理とケアに基づく政策転換を行うことが、社会的コストを最小化する鍵となる。

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THE JOB IS DANGEROUS. THE PAY IS SMALL. BUT THE HONOR IS GREAT.

参考資料・リソース

カバーイメージ

  1. 娯楽目的の大麻所持に関する成人の法的地位

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この記事を書いた人
カンナビノイドニキ
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当ディスペンサリーストアの店長。これまで20年以上の大麻の旅に情熱を注いできた。スイス産に傾倒していたが、最近は合成の魅力に引き込まれ、究極のレシピを模索中。
さらに、大麻およびサイケデリックの私的使用合法化を目指す社会運動にも積極的に参加し、科学的根拠と人権の両面から啓発活動を続けている。

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